ノウハウインタビュー

卵の殻を使った壁材でサステナブルなオフィスづくり

持続可能でよりよい世界を目指す国際目標「SDGs」。略さずに書くとSustainable Development Goals。2015年9月の国連サミットで決まった目標で2030年までに実現させることが掲げられています。そんな中、最近よく目にするのが「アップサイクル」という言葉。「本来は捨てられるはずのものに新たな価値を与え、再生する」という意味で使われています。日本でもSDGsに関心をもつ企業が増えてきていますが、どのように取り組めばよいか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。そこで今回はアップサイクルのリーディングカンパニーである「日本エムテクス株式会社」の三浦社長に、サステナブルなオフィスづくりへの取り組みについてお話をうかがいました。

アップサイクルへの取り組みはいつ頃から?

三浦社長がアップサイクルへの取り組みを始めたのは、まだアップサイクルという言葉がなかった2002年頃から。ゴミとして捨てられているものも、本質的な価値を見抜き、それを活かすちょっとした工夫や発想で、別の価値あるものに生まれ変わらせることができる。このことを多くの人に伝えたい、と強く思っていたとのこと。そのために一番大切にしていることは「身近なものから身近なものに生まれ変わらせること」だそう。身近なものであるからこそ、多くの人に共感され、伝わっていく。

同社ではすでに様々な製品がラインナップされていますが、その中でも代表的なものは、やはり「卵の殻」を使った壁材でしょう。卵の殻には数多くの気孔がありますが、その「生命を生かすチカラ」が、建材として活かされ、数々の機能性建材が開発されました。日常生活のなかで出る身近なゴミを、アップサイクルによって、日常的に触れる建材に生まれ変わらせたのです。

日本エムテクス株式会社 三浦社長

原料として使う卵の殻はどこから?

マヨネーズ工場から供給されています。工場では卵が高速で割られ、その数なんと1分間に600個。排出される卵の殻は、年間約42億個にも及びます。割ったあとの卵の殻は、細かく砕いて粉末状にされ、日本エムテクスに届けられます。これに珪藻土などの様々な自然素材をブレンドすることで、高い機能性を発揮する建材が産み出されました。本来捨てられるはずだったものがアップサイクルされ、私たちの住環境を支える壁材として製品化されるのです。

主成分は卵の殻。
新発想でつくられた壁材の特徴とは

現在、卵の殻を使った壁材としてラインナップされているのはエッグペイント、卵漆喰、エッグウォールの3種。卵のもつ自然由来のチカラで調湿効果・脱臭効果を発揮してくれるのが大きな特徴です。 各事例を見ていきましょう。

エッグペイント

塗り壁に使われるもので滑らかな凹凸感が特長の天然塗料。カラーバリエーションが豊富で、自然光に映える色合いでモダンな空間はもちろん、ナチュラルな空間デザインにもやさしく調和します。

プラスターボードへの直塗りはもちろん、重ね塗りも可能です。リフォームの際には、既存のクロスの上から塗ることができるので、何度でも塗り替えが可能です。乾燥が早いので工期が短縮できるのも嬉しいポイントです

イトーヨーカドー木場店

卵漆喰

これまで再利用の進んでいなかった赤卵の卵殻を漆喰にブレンドしたもの。卵殻のもつ数多くの気孔による調湿性と、強アルカリの漆喰による細菌やウイルスの吸着効果。この2つの効果で、高温多湿な日本の住環境を快適にします。

エッグウォール

細かく粉砕された卵の殻を原料にした壁紙。壁紙でありながら、塗り壁の表情をもつ新発想の製品。卵殻の多孔質な素材が、調湿・脱臭の効果を発揮します

アーバンリサーチ 所沢店

選び方のポイント

天然塗料のリアルな質感を出したいなら「エッグペイント」。補修もしやすく、軽い汚れなら自分で簡単に落とせます。そして最大の魅力は既存のクロスの上からでも塗れるところ。新築はもちろんリフォームを検討されている方にもよく選ばれています。メンテナンスやコストパフォーマンス重視なら「エッグウォール」。壁紙の手軽さがありながら、卵殻粒子の大きさや配合する原料を変えることでさまざまな表情を見せてくれます。SDGsの観点から『エコを意識した壁材を使いたい!』という方は「卵漆喰」がおすすめ。漆喰ならではの温かみはそれでしか味わえないものとなっています。

オフィス環境の改善に一役

アフターコロナで、高まってきているオフィス回帰。自分たちのオフィスが快適で居心地のよい空間であることはとても大切さはどの企業も十分認識しているのですが、オフィス環境の改善はそう簡単ではありません。そんな状況でも何かできないか。そういった意識をもつ企業が注目したのが卵の殻を使った壁材です。前述したとおり、エッグペイントなら既存の壁紙の上からでも塗ることができ、DIYもOK。かつ調湿効果・脱臭効果という卵のもつ自然由来の恩恵も受けられます。従業員の健康面にも配慮でき、さらにSDGsへの貢献にもつながる一石二鳥、いや三鳥ともいえる壁材。「これなら自分たちでもできる」と採用する企業が増えているのも納得です。

SUVACOのオフィスもエッグペイントでDIY

SUVACOのオフィスには壁紙が貼られている箇所がありました。その壁が経年で色がくすみ、気になっていたところ、卵の殻を使った壁材に出会い、DIYで塗装することに。ビルオーナーの了解を取った上で、元の壁紙の上からエッグペイントで塗装しました。オフィスが快適になっただけでなく、仲間と一緒に塗装をすることでオフィスが自分に近いものになった気がします。

これからエッグペイントでのDIYを検討している方はぜひ参考にしてみてください。

下の汚れが浮き出てこないように、まずは元の壁紙の上に下地剤を塗り、エッグペイントをローラーで塗っていきます。

壁のDIYは初めてというスタッフもいましたが、手軽に楽しく塗れました。塗ったところは元の状態より明るい色に。細かいところや気になる部分は、刷毛で重ね塗りしました。調湿・防臭効果にも期待です。

(左)Before (右)After

ぐっと寄りで見ると、元はビニールクロス特有のテカリがありましたが、エッグペイントを塗った後は、すっかり塗り壁のようになりました。

取材協力:株式会社日本エムテクス

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