ノウハウインタビュー

リノベーションで営業力・採用力アップ|築40年オフィス刷新の3つのポイント

<この記事のポイント>

・リノベーションを通じて工場事務所を来店型店舗を兼ねたオフィスへ転換

「単なる修繕」ではなく「動線の見直し」で採用力も向上

・造作家具の活用で、コストを抑えつつ空間の一体感を出す方法

・「コミュニケーション力」と営業を止めない「インフラ管理」は、事業者選びの重要なポイント

はじめに

オフィスは単なる働く場ではなく、来訪者に会社を伝える重要な役割を果たしています。

企業の採用活動では、仕事内容や待遇だけでなく、求職者が実際に目にする職場の雰囲気も、会社に対する印象を左右します。特に、製造業や建設業などで、工場や作業場に併設された事務所は、応募者が面接や会社見学で最初に訪れる場所です。

同様に、商談で来訪する場合、顧客にとって重要な取引を任せる相手が、どんな会社なのかは気になるところです。

事業内容や技術力に魅力があっても、手洗いが古かったり、事務所に古いスチール家具が並び、書類や配線が雑然としていると、求職者や取引相手に会社の本来の魅力が十分に伝わらないことがあります。

一方で、工場事務所の改装を検討する際に、

「壁紙や床を新しくすればよいのか」
「どの範囲まで工事をするべきか」
「工事中も通常どおり営業できるのか」

といった点で迷う企業は少なくありません。

近隣の工務店や内装業者に相談した結果、クロスの貼り替えや古くなった設備の交換など、部分的な修繕の提案にとどまってしまうこともあります。

もちろん、修繕だけで十分なケースもあります。しかし、採用力の向上や企業イメージの刷新まで目指すのであれば、古くなった部分を直すだけでなく、空間の使い方そのものを見直すリノベーションが効果的です。

改装前の事務所。長年使われてきた内装や設備に加え、
収納、動線、来訪者からの見え方にも改善の余地がありました。
改装後は、既存の壁やレイアウトを前提とせず、
執務動線と収納計画から空間全体を再構成しました。

今回は、オフィスバコに相談をいただいた株式会社戸塚様の事例をもとに、工場事務所から、お客様をお迎えする事務所へとリノベーションを成功させた3つのポイントをご紹介します。

株式会社戸塚の事務所は築約40年。オフィスバコがご紹介した株式会社アールプランは、表面的な貼り替えではなく、ゾーニング変更によって空間の構成から見直すフルリノベーションを提案しました。

(参考)株式会社戸塚様のオフィスリノベーション事例については、「経営戦略を空間で体現する。築40年の工場事務所から、成長を加速させる戦略的オフィスへ」をご参照ください。

来店型店舗を兼ねたオフィスの改装は「きれいにする」だけでは足りない

事務所の改装というと、最初に思い浮かぶのは、壁紙や床の貼り替え、照明の交換、古くなったデスクやキャビネットの入れ替えではないでしょうか。

こうした工事によって、室内を明るく清潔にすることはできます。

ただし、長年使ってきた事務所には、見た目の古さだけではなく、さまざまな課題が蓄積しています。

例えば、

  • 社員と来訪者の通路が重なっている
  • 書類や備品の置き場所が定まっていない
  • 増設を繰り返した配線が露出している
  • 部署間のコミュニケーションが取りにくい
  • 来訪者から執務スペースが丸見えになっている

といった問題です。

家具や内装材だけを新しくしても、これらの課題がそのまま残れば、使いにくさは解消されません。新しい家具を入れた直後はきれいに見えても、しばらくすると書類や備品があふれ、再び雑然とした状態に戻ってしまう可能性もあります。

工場事務所のリノベーションで重要なのは、最初から工事内容を決めるのではなく、まずは

誰が、どのように空間を使っているのか
今後、どのような空間にしていきたいのか

を整理することです。

そのうえで、レイアウトや収納、来訪者からの見え方、電話・ネットワークなどを一体的に考える必要があります。

ポイント1:社員と来訪者の動線を、空間の骨格から見直す

自社で改装案を考えると、どうしても、

「この壁紙を変えよう」
「古い机を買い替えよう」
「受付を少しきれいにしよう」

という、目に見える部分から検討しがちです。

しかし、本当に改善すべきなのは、壁紙や家具ではなく、空間の使われ方かもしれません。

そこで重要になるのが「ゾーニング」と「動線」の見直しです。

ゾーニングとは、執務、来客、打ち合わせ、収納、休憩など、それぞれの用途に応じて空間を分けることです。

例えば、社員が日常的に行き来する通路と、来訪者を応接スペースへ案内する通路が重なっていると、社員は落ち着いて働きにくくなります。来訪者から見ても、書類や荷物のあるバックヤードを通ることになり、会社の印象を損なう可能性があります。

株式会社戸塚の事例では、他社からは、段階的な改装計画に基づき、既存の空間を前提とした部分的な改修案が提示されていました。

それに対して、株式会社アールプランは、ゾーニングの見直しにより、空間の骨格から組み替えるフルリノベーションを提案しました。

設計・施工を担当した株式会社アールプラン 代表取締役社長 大山敦史 様

「最初に現場を拝見したとき、内装材の古さ以上に、社員の方と来訪者の動線が混在していることが課題だと感じました。壁紙や床を変えるだけでは使い方は変わらないため、パーテーションを撤去し、ゾーニングの変更によって空間の構成から見直すことをご提案しました」

設計・施工を担当した株式会社アールプラン 一級建築士 柏原創 様

「社員が働くための動線と、お客様を迎えるための動線を明確に分離。来訪者が執務スペースを横切ることなく、スムーズに案内できるレイアウトに変更しました。」

社員の日常動線と来訪者を案内する動線を整理。執務スペースを横切らずに来客対応できるレイアウトへ変更しました。

会社らしさを空間に反映する

オフィスリノベーションでは、効率的な動線を作るだけでなく、その会社らしさをどう表現するかも重要です。

株式会社戸塚様の事務所では、建物にわずかな空間上のずれがありました。そこで、そのずれを設計によって補正しながら、神棚が空間の中央に見えるよう配置しています。

神棚を単に以前と同じ場所に戻すのではなく、オフィス全体の軸として捉え直したことで、落ち着きと品格のある空間になりました。

神棚が室内の中心に見えるよう配置。
会社が大切にしてきたものを、空間の軸として活かしました。

これは、依頼された箇所をそのまま直すだけでは生まれにくい提案です。設計者が会社の歴史や大切にしているものを理解し、それを改装計画に反映することで、単に「新しい事務所」ではなく、その会社にふさわしい空間になります。

採用候補者や取引先からの見え方も考える

オフィスは、社員が働く場所であると同時に、外部の人に会社を知ってもらう場所でもあります。

採用面接や会社見学、商談で訪れた人は、受付や会議室だけでなく、社員の表情、整理された空間、社内の雰囲気などから、その会社で働くイメージやその会社と取引するイメージを作ります。

豪華なオフィスにする必要はありません。大切なのは、会社が社員や来訪者をどのように迎えようとしているのかが、空間から自然に伝わることです。

社員と来訪者の動線を整理し、見せる場所と隠す場所を明確にすることは、働きやすさと企業イメージの両方を改善することにつながります。

ポイント2:造作家具で収納と空間デザインを一体化する

オフィスリノベーションでは、内装工事だけでなく、デスク、棚、キャビネットなどの家具にも多くの費用がかかります。

特に収納量が多い事務所では、既製品のキャビネットを何台も購入することになり、想定以上に家具費が膨らむケースがあります。

また、既製品には一定の規格があるため、壁や柱との間に隙間が生まれたり、高さや奥行きが揃わなかったりすることもあります。

内装をきれいにした後で既製品の収納家具を並べると、家具だけが後から置かれたように見え、せっかく整えた空間の一体感が失われることもあります。

そこで検討したいのが、現場で製作する「造作家具」です。

現場に合わせて収納を設計する

造作家具とは、建物や業務内容に合わせて、現場で大工さんが製作する棚やカウンター、収納などを指します。壁面の幅や天井の高さに合わせて設計できるため、空間を無駄なく使えることが特徴です。

株式会社戸塚は、サッシ事業を営んでおり、日常業務で多くの書類を取り扱います。

そこで株式会社アールプランは、市販のキャビネットを並べるのではなく、必要な書類の量やサイズを踏まえた造作棚を提案しました。

設計・施工を担当した株式会社アールプラン 一級建築士 柏原創 様

「株式会社戸塚様では、業務上保管する書類が多いため、見た目だけを整えても、収納力が不足すれば、完成後にまた物が溢れてしまいます。実際の書類の量や使い方を確認し、建物の寸法に合わせて造作棚を計画しました。設計・施工が直結している強みを活かし、きれいな状態を長く保てることを重視しています。」

大量の書類を収められる収納の骨格を、オフィスの内装と一体的に作ることで、収納力を確保しながら、すっきりとした空間を実現しています。

壁面いっぱいに設けた造作棚。
サッシ事業で扱う大量の書類を収納できる容量を確保しながら、
内装と一体感のあるデザインに仕上げています

造作家具は「高級な特注品」とは限らない

造作家具と聞くと、「既製品よりも高額になるのではないか」と感じるかもしれません。

使用する素材や仕上げによって価格は変わりますが、すべての造作家具が高価とは限りません。

既製品を何台も購入する場合と比べて、必要な収納量を無駄なく確保でき、内装工事と一緒に施工できるため、全体としてコストを抑えられることもあります。

重要なのは、既製品と造作家具のどちらか一方に決めることではなく、

  • 日常的に収納する書類や備品の量
  • 将来増える可能性
  • 社員が取り出しやすい高さや位置
  • 来訪者から見える範囲
  • 内装工事を含めた総予算

を踏まえて、使い分けることです。

造作収納や間仕切りを内装と同時に設計することで、
既製家具を後から並べたような「後付け感」を抑え、
統一感のあるオフィスを実現しました。

社員が使いやすく、整理された状態を維持しやすい収納を作ることができれば、リノベーション直後の美しさを長く保ちやすくなります。

ポイント3:営業を止めないために、工事とインフラ移設を一体で計画する

既存の事務所を改修するリニューアル工事は、何もない場所に新しいオフィスを作る場合とは異なる難しさがあります。

工事を始めてから、壁や床の内部に想定外の状態が見つかることがあります。また、社員が通常業務を続けながら工事を進める場合は、音、ほこり、安全性への配慮も必要です。

さらに、事務所を一時的に移動する場合には、

  • 電話回線
  • インターネット回線
  • 社内ネットワーク
  • 複合機
  • サーバー
  • 郵便物や来客への対応

なども切り替えなければなりません。

内装工事だけを考えていると、こうしたインフラの移設が間に合わず、業務に支障が出る可能性があります。

補助金のスケジュールに合わせたタイトな工事

株式会社戸塚のケースでは、補助金のスケジュールとの関係から、契約後、着工までの準備期間が限られていました。

通常業務を止めずに1階の事務所を改修するため、工事前に2階へ仮事務所を設け、電話やインターネット環境を一時的に移設しました。

株式会社アールプランと株式会社戸塚が役割を分担しながら密に連携することで、営業を1日も止めることなく、リノベーションを進めることができました。

設計・施工を担当した株式会社アールプラン 代表取締役社長 大山敦史 様

「今回は通常業務を継続しながら工事を進める必要がありました。内装工事だけでなく、仮事務所への移動や電話・ネットワークの切り替え時期まで含めて、戸塚様と細かく確認しながら工程を組みました」

改修工事では発注者側の協力も欠かせない

工事を予定どおり進めるためには、施工事業者の工程管理だけでなく、発注する企業側の協力も欠かせません。

例えば、次のような事項を早めに整理しておく必要があります。

  • 工事中も必ず使用する設備
  • 仮事務所に移す什器や書類
  • 廃棄する家具や備品
  • 電話・ネットワーク事業者への連絡
  • 社内で意思決定する担当者
  • 現場確認や承認を行うタイミング

施工事業者から確認事項が届いても、社内で判断できずに回答が遅れると、その分だけ工事全体が遅れる可能性があります。特に、補助金の期限、繁忙期、決算期など、完工時期を動かしにくい事情がある場合には、発注者と施工事業者が早い段階から工程を共有することが重要です。

株式会社戸塚のケースでは、山口取締役が改装プロジェクトをリードして社内をまとめつつ、株式会社アールプランとコミュニケーションを密に対応したため、スムーズに進めることができました。

工事以外も理解できる事業者を選ぶ

オフィスのリニューアルでは、設計や施工の技術だけでなく、実際の業務をどう継続するかまで考えられる事業者が求められます。

見積金額やデザイン案だけでなく、

「工事中はどこで業務を行うのか」
「電話やネットはいつ切り替えるのか」
「社員や来訪者の安全をどう確保するのか」

まで具体的に提案してくれるかを確認しましょう。

既存オフィスの改修経験が豊富な事業者であれば、発注者が見落としやすい準備についても、早い段階で助言を受けられます。

オフィスのリノベーションで確認したい事業者選びのポイント

株式会社戸塚の事例から分かるように、いわゆる工場事務所からBtoCのお客様をお迎えする事務所へと転換を図るようなリノベーションでは、単に施工ができるだけでなく、会社の課題を空間の提案に置き換えられる事業者を選ぶことが重要です。

相談先を比較するときは、次のような点を確認してみましょう。

見た目だけでなく業務内容を理解しようとしているか

収納する書類や備品、社員の人数、日常的な業務フローを確認せずに、最適なレイアウトを作ることはできません。

最初の打ち合わせで、どのような質問をされるかも、事業者の提案力を判断する材料になります。

家具・配線・設備を含めて全体を考えているか

内装、家具、照明、電話、ネットワークを別々に考えると、工事後に追加費用や手戻りが発生しやすくなります。

どこまでを一体的に計画・管理してもらえるのかを確認しましょう。

改修中の業務継続まで考えているか

工場や事務所を稼働させながら工事を行う場合、通常の新築工事とは異なる経験が必要です。

仮移転、工事区画、安全管理、インフラ切り替えについて、具体的な進め方を提示してもらえるかがポイントです。

要望に対して別の選択肢も提示してくれるか

依頼した内容をそのまま見積もるだけでなく、

「その目的であれば、こちらの方法のほうが使いやすい」
「既製品ではなく造作にしたほうが費用を抑えられる」
「全面改装ではなく、この範囲を優先したほうが効果が高い」

など、別の選択肢を提示してくれる事業者は、発注者と一緒に課題解決を考えている可能性が高いでしょう。

株式会社戸塚 取締役 山口潤様のコメント

「アールプランは『会社の未来』を考え、動線や収納まで踏み込んだ提案を出してくれました。選定にあたっては、自社で設計・施工を完結させている安心感と、コミュニケーションのストレスのなさが、大きな決め手になりました。実際、途中でエントランスの工事を追加でお願いしましたが、調整もスムーズで、快く引き受けてくれました。」

オフィスの改装は、会社の未来に向けた経営投資

オフィスのリノベーションは、古くなった内装や設備を修理するだけのものではありません。

働く社員にとって使いやすい環境を作り、採用候補者や取引先に会社の魅力を伝え、これからの事業にふさわしい職場を整えるための経営投資でもあります。

執務室だけでなく、毎日使うトイレや給湯スペースも刷新。
こうした付帯空間の快適さも、社員の満足度や求職者が受ける印象を左右します。

今回ご紹介した株式会社戸塚様の事例では、次の3つが成功のポイントとなりました。

1.社員と来訪者の動線を、空間の骨格から見直したこと

2.造作家具を活用し、収納力・デザイン・コストのバランスを取ったこと

3.仮事務所や通信インフラの移設を含め、営業を止めない工程を組んだこと

こうした提案は、発注者側だけで考えることが難しく、事業者によっても内容に大きな差が出ます。

「壁紙を貼り替えたい」「古い家具を新しくしたい」という相談から始まったとしても、その背景にある課題まで理解してくれる事業者と出会えれば、当初の想定を超えるオフィスづくりができるかもしれません。

(取材協力)株式会社戸塚株式会社アールプラン

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