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働きやすく、従業員が来たくなるようなオフィス環境の構築は、生産性向上やブランド力向上を通じて長期的な企業価値向上につながるという認識から、多くの企業がオフィス内装の改善に目を向けるようになってきました。
とはいえ、専有部分だからといって自由にリノベーションできるわけではありません。オフィス内装工事には、特有の注意点があります。内装工事の工事区分の種類やそれに伴う注意点を理解し、ニーズに合った適切な内装工事会社にリノベーションを依頼することで、オフィス改装をスムーズに進め、予期せぬトラブルを避けることができます。
ここでは、オフィス内装工事において気を付けるべきポイントと、A工事、B工事、C工事の違いについて解説します。
オフィス内装工事の基本的な流れ
オフィス内装工事の基本的な流れは以下の通りです。
工事区分 A工事・B工事・C工事とは
オフィス内装工事の区分には、A工事、B工事、C工事の3種類があり、それぞれに役割や責任の範囲が異なります。上述の「工事の流れ」で言うと「施工段階」で関わってきますが、工事区分の違いを理解し、計画段階から念頭に置いておくことでトラブルや予算オーバーを防ぐことにつながります。
A工事
主にビルオーナー自身が発注する工事で、ビル全体の維持管理や共用部分の修繕など、テナント全体に影響を与える部分の工事が対象になります。A工事は、テナントが入居する前や、ビルの大規模修繕の際に行われることが一般的です。建物全体に関わるため、法的規制や安全基準の遵守が求められます。
B工事
入居するテナントが依頼し、ビルオーナーが指定した業者が行う工事です。主に、テナント専有部分内であるものの、全体との調和が必要な部分や基本的なインフラに関わる部分の工事が対象になります。テナントがビルオーナーの指定する業者と契約した上で、ビルオーナーの基準に沿った内装工事が行われます。
専有部分内の工事ですが、ビル全体の統一感や安全基準などが守られるようにビルオーナーの指定業者が工事を担当します。リニューアルの完成に合わせて、コストや工期に無駄が発生しないように、ビル管理会社と調整が必要なケースもあります。
C工事
C工事は、テナントが独自に契約した業者が行う工事です。テナントの業務に特化した設備や、デザイン性を重視した内装など、標準仕様を変更する場合に行われます。
C工事であればテナントが自由に内装業者を決めることができるので、デザインやコストのコントロールがしやすい一方で、依頼する業者の選び方などが重要になります。
また、工事の内容によっては、当該ビルの規定によってB工事扱いになるものとC工事扱いになる基準が異なることもあるので、個別に確認が必要です。
工事区分の確認方法
室内の改装がどの工事区分に該当するかは、ビルの規定によって異なります。事前に工事区分表や賃貸借契約書などで確認しておきましょう。
工事区分は一律ではない
様々な工事とB工事・C工事の区分
テナントとしてオフィス改装を検討する場合には、A工事が問題になるケースは比較的少ないですが、B工事・C工事の区分には悩まされることがあります。
例えば、室内にパーテーション(間仕切り)を作るくらいはC工事でクイックにできるだろうと思っていると、照明や空調が影響をするため、B工事が関わってくるケースもあります。
具体的な事例で見てみましょう。
具体例(パーテーション設置工事)
例えば、以前手がけたオフィスフロアをパーテーションで区切る内装工事です。
このビルの場合、パーテーションの設置だけならC工事に区分されたのですが、パーテーションの設置に伴い誘導灯や天井にあった既存の照明にも手を加えなければならなかったため、その部分はB工事に区分されました。
この事例の場合は、事前にB工事とC工事に分かれることを確認していたため、その前提で役割分担やスケジュールを組むことができ、希望通りのパーテーションを設置できました。
このように、工事の内容によって、区分がBとCに分けられることもあるので注意が必要です。
この事例は、お客様から事務所移転に伴うスチールパーテションの設置、エントランス工事の相談を受けて担当したものです。このように、改装内容によって工事区分がまたがり事業者間の調整が必要な工事になる可能性もあるので、必ず、早目にビルオーナーに確認してください。
その他事例と留意点
そのほかにも、状況次第でB工事の対象になるようなケースも意外と多いので注意しましょう。
例えば、
・間仕切りの設置自体はC工事であったが、音が漏れないように天井まで届く間仕切りを計画したため、空調と干渉し、空調工事と消防設備工事がB工事になった
・専有部内の間仕切りの仕上げ変更なのでC工事だと思っていたら、実は、当該間仕切りは共用部扱いだったため、ちょっとした改修でもB工事扱いとなった(例えば、一つのテナントが複数部屋分を借りて繋げて使っているような場合、一部の間仕切りが共用部扱いのケースもあります)。
などのケースがあります。
また、電気工事が関わる場合も要注意です。電源タップ増設だけであればC工事で対応できる場合も多いですが、ブレーカー増設が伴う場合はB工事に該当することが多いようです。
照明をLEDに交換する場合も、工事区分を確認した方が良いでしょう。
ビルの定めや状況によってさまざまなケースがあるので、個別に工事区分表や賃貸借契約書などでチェックするとともに、ビルオーナーや管理会社に確認することが大切です。
オフィス内装工事で気を付けるべきポイント
コミュニケーションの重要性
ビルオーナー、設計者、施工業者、そしてテナント自身との円滑なコミュニケーションが成功の鍵です。工事区分を跨る場合は、関係者も多く、改装工事への取組姿勢もバラバラな場合もあるので、各工事(A工事、B工事、C工事)の進捗状況や課題について、定期的に情報を共有することが重要です。
予算管理
内装工事は、予算が膨らみやすい領域です。計画段階での詳細な見積もりと、工事進行中のコスト管理・スケジュール管理を徹底することで、予算オーバーを防ぎます。
法規制と許可
工事に伴う法的な規制や許可が必要な場合があります。特に、A工事やB工事においては、ビル全体に影響を与える可能性があるため、建築基準法や消防法などの確認が必須です。
スケジュール管理
オフィス内装工事の遅延は、テナントの業務開始に直接影響し、事業に影響を与えます。また、コストが予想以上に膨らむ原因の多くがスケジュールの遅れです。各工事のスケジュールをしっかりと管理し、遅れが生じた場合の対応策をあらかじめ考えておくことが重要です。
品質管理
施工品質の確保も重要です。工事後の検査を十分に行い、不具合がないかを確認することが、長期的な安心につながります。
内装業者の選定で大事なポイント
意図を正しく伝えること
どんなオフィスにしたいのか、思いを理解し、形にしてもらえる事業者に依頼することが大切です。多くの会社に声をかけて形だけ競合させるよりも、依頼したいと思える会社と十分なコミュニケーションをはかり、しっかりと意向を伝えることで成功の可能性は高まるでしょう。
チームアップ
一言で内装工事といっても、依頼主の事業内容や要望により、対応すべき内容は様々です。デザイン性に優れたオフィス改装を指向する場合でも、事業内容によっては電気工事や設備工事が複雑になるケースもあります。全体を俯瞰し、改装の内容に応じて適切なチームアップを行うことが大切です。
まとめ
オフィスリノベーションは、長期的な企業価値向上に直結する重要なプロジェクトです。いざ施工段階になって、工事区分の違いを理解していなかったために、想定以上にコストが膨らんだり、やりたかった改装工事ができなかった、などということのないように、A工事、B工事、C工事の違いを理解しておきましょう。
また、工事区分の規定はそのビルによって異なるため「あのビルではできない工事が、このビルならできる」ということもありえますので、改装の内容が決まったらまずはビルオーナー、または管理会社に確認しましょう。
そして、コミュニケーション、予算管理、法規制の遵守、スケジュール管理、品質管理といった要点を押さえ、依頼内容に相応しい内装会社に依頼することで、スムーズで効率的な内装工事を実現しましょう。
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