インタビュー

テレワークが普及した今問われる「オフィスに行くこと」の意味とは?
コニカミノルタジャパンに聞く

多くの企業ですでにテレワークが浸透した今、これまで「無くてはならない場所」として考えられていたオフィスの存在意義が大きく変わりつつあります。新たなワークスタイルが普及した今、企業に求められるのは、オフィスに対して従業員が求める役割を正しく捉え、より良い環境を作ることではないでしょうか。

今、あえてオフィスで働く意義とは何なのか。昨年(2021年)、自社オフィス内に「つなぐオフィス」をオープンしたコニカミノルタジャパンの先進的な取り組みから、そのヒントを探ります。

柔軟な働き方ができる環境を見据え、先んじて行なっていたテレワーク

—コニカミノルタジャパンは、コロナ前から働き方改革に積極的に取り組んでいたと伺っています。

前オフィスから現在本社を置く浜松町に移転したのは2014年8月のことでしたが、その当時から紙に縛られない働き方環境の実現を考え、オフィスの刷新計画を進めてきました。また、都心でのオリンピック開催により、出勤環境や物流などに支障が出ることをBCP対策と捉えることも、継続的に働ける環境として大事な要素と考え、働き方改革に取り組みました。

オフィスレイアウトに関しては、移転前はほぼ1フロアに1組織が利用する縦型ビルだったため、組織間コラボレーションが発生しづらいこともありました。そのため、本社移転時には、横に広いメガオフィスへ変更し、各組織がコラボレーションや意見交換をしやすい環境を導入したいとも考えていました。

—テレワークについても、比較的早い段階から導入されていたそうですね。

2016年頃からは従業員満足度の向上や、優秀な人材の確保などの観点からより具体的な働き方改革を進めており、その一環としてテレワークの実施も行ってきました。

牧野陽一さん: コニカミノルタジャパン株式会社 コーポレート本部 経営企画部/働き方対策の施策や実行に関わっており、浜松町オフィスだけでなく全国150拠点の最適化を実行している

—導入当時から現在まで、ICT環境などの面で変化はありますか?

実は2016年時点でのテレワーク導入時に整えたICT環境などは、現在も大きく変わっていないんです。もちろんオンプレミス(情報システムサーバを自社内に設置・完結する形で管理および運用を行うこと)で使っていたものがクラウドに、システム自体のバージョンアップといった変化は多少あるものの、実際に使用する従業員目線での機能的にはさほど変わっていないはずです。

—現時点での普及率はいかがでしょうか。

現在、テレワークはほぼ全社的に普及しています。しかし、テレワークを導入した当初は、どこにいても働ける環境があるにも関わらず、一部の従業員が積極的に取り入れているような状況でした。まだ「出社=働くこと」といった風潮も多少ありましたね。

—どの企業でも起こりうる問題ですね。どのような手段で解決したのでしょうか。

全社的にリモート推進期間を設けました。具体的に言うと、「出社しなくても自分たちの普段の業務が滞りなく行えるかを確認する期間」として推進期間を設けた形です。このような取り組みを全社的に行うことにより、従業員の意識は年々改善し、普及度も上がってきたように思います。

また、きっかけとしてあまり良いことではありませんが、大型台風やコロナのまん延で実際に出社困難な状況を体感したことにより各組織長の意識が変わり、従業員もリモートの恩恵を感じる機会が増えました。「仕事は会社でするものだ」といった意識を持つ従業員は、この数年でかなり減少したように感じます。

出社せずとも仕事ができる環境を備えれば、社員の通勤などによる罹患リスクは減らすことができます。従業員の安全を確保できることは、従業員自身の満足度だけでなく、結果として社員家族の満足度の向上にもつながると考えています。

「求められるオフィス」の形はコロナ禍を経て変化した

—昨年の2021年5月には浜松町オフィスを「つなぐオフィス」としてリニューアルOPENしました。このリニューアルは、どのような課題感をもって進められたのでしょうか。

課題のひとつは、コロナまん延による出勤状況の変化に対応することでした。

コニカミノルタジャパンとしては早い段階でガイドラインを出し、内勤を主とする従業員については原則テレワーク推奨としました。ちなみにコロナ前の席数は全従業員数の6〜7割ほど。コロナ禍になってからの出社率は、浜松町オフィス在勤者では平均24〜25%です。ピークタイムに限定していうと、稼働率は20%を切るような状況になりました。

想定に対しておよそ3割しか稼働していないとなると、賃料コストは当初設定の3倍強と言えます。これはとてももったいない状態ですし、そもそも密になる公共交通機関を利用しての出社自体もリスクです。従業員にリスクを負わせずこれまで通りの事業を継続したいとなると、どこでも働ける環境に移行せざるを得ませんよね。

2014年の移転時から、さまざまな事があり状況は大きく変わりました。出社率低下による賃料などのコスト削減、さらにテレワークの普及で低下しがちなエンゲージメントの向上と業務効率上昇の両立が、今回のリニューアル課題だと考えていました。

—オフィスに求められる役割も、コロナ禍を経て変化したように思います。

そういった変化に応じて、コニカミノルタジャパンでは新たな役割を見据えた環境作りに取り組んでいます。例えば今回のリニューアル時に設けた「ハイフォーカスエリア」などもその取り組みの一環です。

テレワークが浸透したとは言え、自宅に集中できる環境がある従業員ばかりではありません。自宅環境によっては、家族の物音が気になったり個室が無かったりといった理由で集中しにくく、オフィスにいるよりも業務効率が下がってしまうことも考えられます。

また、業務内容によっては対面して業務を行なった方が圧倒的に効率の良い場合もありますよね。つまり、各従業員の立場でハイブリッドに働ける場所が必要ということです。「コラボレーション業務を行いやすい環境とは?」「周囲を気にせず集中できる環境とは?」といったことを、ひとつずつ課題として考えました。

—どこでも仕事ができる環境が整っていれば、従業員もその中で自分にとっていちばん仕事がしやすい場所を選ぶことができますね。

リアルオフィスを作らない会社も出てきましたが、立場や業務内容、スタイルによって働きやすい環境は異なるものです。オフィスでしかできないことがあったり、自宅よりもオフィスが働きやすかったりすると、自然と足が向くようになる。リモート環境の整備と同じように、働きやすい環境の構築は重要です。

周囲の音や視線を遮断し、業務に没入しやすい環境が整えられた「ハイフォーカスエリア」。レイアウトやデスクパーテーションの分量も、席によって変化をつけている。
社員同士が思考の共有や議論を行いやすい場として設けられた「ハイコラボレーションエリア」。ハイフォーカスエリアと同じフロアにありながら、それぞれがストレスの無い環境を実現させている。

検討・検証を重ねた先に理想のオフィスがある

—「つなぐオフィス」のコンセプトづくりはどのようなプロセスで行われたのですか?

まずは担当者から各部署の従業員へヒアリングを行い、さらに我々から空間デザイナーへ、働き方に関する検証の場として行いたい要望を伝えました。

ヒアリングから浮かび上がった具体的なテーマとしては、

  • 業務効率を徹底的に高められる場所づくり
  • エンゲージメント(帰属意識)を高められること
  • 従業員が創造性を高められる環境

この3点です。これまでのリニューアルでは席数の活用が主な指標でしたが、そこにエンゲージメントと創造性という要素が加わったことが、今回特に大きかったように思います。

また、これらと同時に席数の最適化も行いました。席数は従業員全体の3割程度の稼働を想定。ただしそれは現状の使い方で、コロナ収束後には5割ほど稼働するものとして設定しています。

—リニューアルOPENから約8ヶ月が経ちました。実際に運用し始めてから気付いた追加課題などもあったのでしょうか。

新しい環境やシステムに対して不安を感じたり、慣れ親しんだ行動パターンを変えることに否定的な従業員はどうしてもいるので、従業員全員に運用ルールを正しく理解してもらうことが、最初の課題と言えるかもしれません。

例えば席や会議室の予約システムを導入した際、予約作業を行わず使ってしまう人がいるために、予約した従業員から「予約をしたのに使えない」といった苦情が出ていました。これは再度、各上長への周知を行うと同時に、若干わかりにくかった予約システムそのものの改修を行うことで改善しました。

席予約は専用サイトから行えるほか、各座席に貼られたQRコードから本当に空席かどうかの確認が可能。空席の場合、その場でチェックインして使用することもできる。

—オフィス改革を実際に行なった経験から、リニューアルにおいて特に重要だと思うのはどのようなことでしょうか。

メインとなる働き方や社員構成、社員の特性によって求められるものは違うので、企業の規模に関わらず、社員の年代、構成、性格や考え方などをリサーチして、自社オフィスに求められているのはどういった環境なのかを明確にすることが重要だと思います。

あわせて、地域特性も検討材料となります。マイカー通勤する従業員の数や、オフィスの立地的な特性、例えば豪雪などで一時的に通勤が難しくなる可能性があるのかなどによって席数設定は変わるので、環境も考慮すべきです。

一方で、天災や事故渋滞、電車の遅延などによる出勤トラブルはどの地域でも考えられるものですから、前提として「どこでも働ける環境」は企業として用意しておくべきです。周囲の音を考慮したレイアウトや会議ボックスの導入などは、どの規模の企業であっても有用なのではないでしょうか。

人気の1人用WEB会議ボックス。3社から製品を導入し、使い勝手などのリサーチを行なっているそう。

また、リニューアルそのものも大事ですが、最も重要なのはオープンしてからの運用です。オフィスリニューアルは「改装したら終わり」ではありません。

実際に運用して浮かんできた新たな課題の洗い出しは、定期的に行わなくてはなりません。そして課題ヒアリングの際には、その課題を感じている社員本人がどうしたいか、改善案もセットで聞くことです。リニューアル担当者側の想定と現場の所感が一致しているとは限らないので、現場からのフィードバックをもとに改善していく仕組みづくりが大事なのですが、これについてはトライアンドエラーで高めていくしか方法はないように思います。

コニカミノルタジャパンでも、我々が想定した使い方とは違う形で席を使う従業員がいたり、一部の席に人気が集中するなど、実際に運用し始めてみて想定外に感じることはいくつもありました。一方で、狙い通り満足度が上がったエリアもあります。ハイフォーカスエリアWEB会議ボックスなどがそれにあたるのですが、これらは現在も特に人気のある場所です。

壁を背にしてPC用クッションを使う想定だったが、窓側の縁を机代わりにビーズクッションを椅子として使う従業員が多く驚いたという「ハイクリエイティビティエリア」。「従業員が使い方を自由に選べる場の提供」が実証された例とも言える。

—ツール導入に伴うルール設定やレイアウトデザインによって、自然な形で企業から従業員へ働き方の提案を行うこともできそうですね。

コニカミノルタジャパンでは業務効率化の一環として、ただ時間を掛けるような仕事の仕方を避けるため、1回の席や会議室の利用予約時間を、1枠あたり2時間や3時間など環境に合わせて設定しています。一定時間内に集中して業務に当たれる環境づくりを、オフィスの仕組みによって提示している形です。

また、各従業員が日々の業務内容や気分によって最適な場所で仕事ができるよう、席のバリエーションを数多く作って、稼働状況から人気のある場所・傾向を調べたり、光量や色などの調光を考えたり。他にもBGMなどの聴覚や、リラックスできるアロマといった嗅覚など、五感に訴求する仕組みも含め、さまざまな面からより働きやすい環境づくりを検討・検証し続けています。日々変化する働き方や環境などに適応しながら、この先に向けての最適なオフィスづくりを今後も考えていきたいと思っています。

取材・文/松永麗美 写真/鈴木愛子

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