インタビュー

ABWを成功させた8つの工夫とは?
コニカミノルタジャパンのオフィスを取材

ABW(Activity Based Working)とは、従業員が自由に働く場所と時間を自己裁量で選択できるワークスタイル。テレワークとの大きな違いは、働く場所をオフィス・自宅に限らず自ら選択できるところにあります。

そんなABWを早くから導入しているのが、東京・浜松町にあるコニカミノルタジャパンの浜松町オフィス。2021年にリニューアルオープンした「つなぐオフィス」の事例から、ABWの導入を成功させるために彼らが取り入れたことの一部を紹介します。

東京・浜松町にあるコニカミノルタジャパン「つなぐオフィス」。天井高は一般的なオフィスと変わらないにも関わらず、照明や床面などさまざまな箇所に凝らされた工夫で広々として見える。

ABW導入のポイントは「従業員を知ること

「つなぐオフィス」リニューアル担当者としてABWの導入にも携わった経営企画部の牧野さんによると、導入時に重要なのは、自社従業員の年代、性格、構成、考え方、希望する働き方などの詳細なリサーチだそう。実際にその場所で働くことになる社員へのヒアリングやアンケートによってこれらを正確に把握することで、「一般的に必要と思われる環境」ではなく「自社にとって本当に必要な環境」が分かると言います。

牧野陽一さん コニカミノルタジャパン株式会社 コーポレート本部 経営企画部/働き方対策の施策や実行に関わっており、浜松町オフィスだけでなく全国150拠点の最適化を実行している

アウトプットしやすい環境によるパフォーマンスの向上は、企業と従業員共通のメリット。また、働き方を自由に選べることは従業員の満足度にもつながります。

ABWに限らずオフィスリニューアル全般において言えることですが、理想とするオフィス環境の明確なイメージを持つこと、そして自社の環境改善に何が必要かなのかを正確に把握することが大切です。

ABW導入を成功に導いた8つの工夫

では、実際にコニカミノルタジャパンが「つなぐオフィス」で取り入れた、快適な環境でABWを導入するための8つの工夫をご紹介します。

(1)ワークフローのデジタル化

まずは場所を選ばず業務に当たれるよう、情報セキュリティ面も対策されたICT環境を整備。また、PCやクラウドなどのツール面を整えるだけでなく、はんこ出社やFAX出社を行わず済むよう、業務の方法についても改めて見直しました。

「先方の都合によっては仕方ない部分もありますが、少なくとも自社内の業務についてはデジタル化できるよう取り組みました」(牧野さん)

(2)フリーアドレス及び会議室の予約システム導入

「つなぐオフィス」内の席や会議室は、その多くが専用サイト・アプリから予約を行います。空席があれば机に貼られたQRコードから予約状況を確認し、空いていればその場でチェックインして使用することも可能。予約・使用時間の超過やチェックイン状況なども、入口モニターや専用サイトを見れば一目でわかります。

「つなぐオフィス」入口に設置している大型モニターで現在の稼働・予約状況がリアルタイムに把握できる
空席状況も手元のアプリからすぐに確認可能

(3)計画的な7つのゾーニング

場所を問わず業務に当たれるABWのメリットを最大限活用できるよう、「つなぐオフィス」では、働き方に応じた7つのゾーニングを設定しています。

周囲の音や視線を遮断し集中して1人で業務にあたれる集中ブースや、メンバーと意見交換を行いやすい「コラボレーションエリア」など、その日、その時間の業務内容やプロジェクトメンバーによって、都度最適な環境を選んで働けます。

「オフィス内外を問わず、どこで働くかを自由に選べるABWだからこそ、従業員の立場に立って『オフィスでしかできないこと』や『自宅よりも働きやすい環境』を考えたオフィス構築が必要だと考えています」(牧野さん)

集中力を最大限高められるよう設置された「ハイフォーカスエリア」。デスク周りのパーテーションも完全に囲われたものから間仕切り程度のものまでさまざま。
社内での共有や議論を活性化させる「ハイコラボレーションエリア」。グリッドで区画が区切られており、それぞれ異なる家具を配置している。

(4)会議ボックスの導入

フリーアドレスエリア内でも周囲を気にせずリモート会議に参加できる、会議ボックスを複数導入。1人用のものから最大4人まで同時に入れる大型のものまで、さまざまなメーカー、種類のものを導入し、実際に運用しながら稼働率や人気度などのリサーチも行なっているそうです。

会議ボックスは通常業務に便利なだけでなく、仮にオフィスが移転することになった場合も次のオフィスに持ち込めます。作り付けの会議ブースとは異なり、継続的に自社の資産となるのも大きなメリットではないでしょうか。

(5)オフィス家具のサブスク化

社員に人気のあるデスクや什器などをリサーチし日々最適な環境を検証する中で取り入れたのが、家具のサブスクリプションサービス。一度購入すると取り替えが難しかったオフィス家具も、サブスクリプションサービスを利用すれば、社員の意見を聞いてより良いものに入れ替えることも可能です。

コニカミノルタジャパンでは1年ごとに什器の一部を入れ替えるサービスを採用し、アンケートや利用率を元にその時々で最適な家具を取り入れています。

(6)モバイルバッテリーの導入

「つなぐオフィス」には、オフィスによくある配線周りの煩雑さが目立ちません。話を聞いてみると、最低限必要な電源は設置していますが、各従業員がPCなどを使用する際は各自が入口付近に設置されているモバイルバッテリーを取り、その日働く場所で使用しているそうです。「つなぐオフィス」以外では使用できないため、持ち出し・紛失のリスクも少なく、充電式なので繰り返し使えます。

オフィス内での配線工事費用の削減につながると同時に、配線が無いことでレイアウトの自由度が増すのも大きなメリット。都度、状況に合わせたレイアウト変更を可能にしました。

(7)サウンドマスキング、光量の調整、香りなど五感に訴えるアイテムの導入

「ハイフォーカスエリア」などの集中ブースでは、周囲の音が気にならないようサウンドマスキングを導入。これにより、共有エリア内にあっても周囲の音を気にせず集中できる環境を実現しています。

一方、「ハイクリエイティビティエリア」では木立の葉が風に揺れる音や小鳥のさえずりなどリラックスできるBGM、グリーンの設置、アロマディフューザーの活用など、各社員のアウトプットを高めるためのアイテムが数多く使われています。

創造性を高めることを目的に設置された「ハイクリエイティビティエリア」。光量や調光などについても検証を行なっています。

(8)個人ロッカーの廃止

ドキュメントソリューションによる保管文書ゼロ化の推進により、固定の個人ロッカーを廃止。これにより、執務スペースをより広く確保できました。私物などは1日ごとに空いているロッカーを利用。席の固定化も防げます。

部署ごとに割り当てられたロッカーと1dayパーソナルロッカー。明確なルールを設けたことで、支障なく運用できているそう。
機能を厳選したファシリティースペース。衝立の裏には複合機や文具など、従業員全てに関わる設備がまとめて設置されている。

常にアップデートできる環境づくりが適切な管理につながる

ABW最大のメリットは業務効率化と従業員の環境向上ですが、その環境整備にともない、設けた設備の管理問題も同時に課題として上がってきます。

牧野さんによると、適切な管理を行うポイントは、こまめな課題の洗い出しとヒアリングにより、実際に改善していく仕組みを作ること。フィードバックを集める際に、現場で働く従業員に「どうなるとより環境向上につながるのか」を意見してもらうことでアップデートしていくことが重要とのこと。

また、ABW導入のもう一つの課題としてよく挙げられるのが、従業員エンゲージメントの維持について。リモートワークによる帰属意識の低下が懸念されますが、これを改善するには、会社としての評価方針を明示することが大事です。

設備運用とモチベーション維持の両方に共通して言えることですが、業務内容によって適した働き方は異なるため、全社一律での最適化は難しいものです。

例えば設備面では、経理部などある程度エリアを固定した方が業務効率が良い部署については半固定席を設けるべきですし、評価方針についても職種によって最適化するなど、一律化しない環境づくりも時には必要です。

「場所」ではなく「人」にフォーカスする

本記事で紹介したコニカミノルタジャパンの事例からは、働く「場所」ではなく、働く「人」のアウトプット最適化に軸を置いたABWが、従業員それぞれの環境、スタイルにあわせた自由な働き方を実現していることが分かります。

場所や時間に拘束されないABWは、コロナ禍における通勤リスクの低減だけでなく、将来的な介護や育児など、従業員のライフステージ変容にも柔軟に合わせられる働き方です。そしてそれは、優秀な人材の確保や、従業員満足度の向上にもつながるのではないでしょうか。

さまざまな取り組みによりABWの導入を成功させたコニカミノルタジャパンのように、そこで働く人たちに適した環境を備え、それを常に刷新していく姿勢が、企業成長に直結する最大の一手なのかもしれません。

取材・文/松永麗美 写真/鈴木愛子

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