ノウハウ

オフィスデザインのプロが考える理想のワーク環境 ~パーテーション編~

スペースの間仕切りとして活躍するパーテーション。英語のつづりは「partition」なので「パーティション」と発音する人もいます。今回はオフィスレイアウトに欠かせないパーテーションについてお伝えしていきます。新オフィス設立や既存オフィスの改装を検討中の方はぜひ読んでみてください。

普段は気にもとめない存在だけれども…

日々仕事をしている中で、什器のひとつであるパーテーションについて考えることは、ほとんどないと思います。言ってみれば、歩きなれた道沿いにある塀のようのもの。一旦設置されると、すぐその場所になじみ、いつもそこにあるのが当たり前になるからです。そんなパーテーションですが、あらためてフォーカスしてみると、とても身近なものでありながら多種多様なものがあり、様々な場面で私たちのオフィス環境を支えてくれていることが分かります。

用途やシーンに合わせて適切なものを選ぼう

パーテーションには間仕切りとしての役割だけを果たすもの、インテリア性やデザイン性のあるもの、機能性を兼ねたものなど、用途やシーンに合った様々なものがあります。ここでは高さや素材にも着目し、タイプ別にいくつかのパーテーションをご紹介します。

パーテーションによるクローズド空間

閉じられた空間は関係者だけで会議をしたいときに便利。狭くてもいいから確保したいという要望も多くあります。実際に設置する際は使用目的を明確にしておきましょう。完全に視線を遮断したいのか、あるいは周囲から見えてもいいのか。開放感をもたせたいならガラス張りにしてもよいかもしれません。

株式会社寿資産評価様の事例

株式会社寿資産評価様のオフィスではガラスで囲んだスペースと中が見えないパーテーションで囲んだスペースを設けました。開放感を出しつつ採光性も確保した設計となっています。床の素材や色を変えることもエリア分けには有効。イエローのカーペットがアクセントになりオフィス全体を引き立たせています。

インテリアも兼ねたお洒落なパーテーション

株式会社ブルーテック様の事例

企業イメージを大切にする株式会社ブルーテック様のオフィス。限られたスペースであっても最大限、思い描いた理想の空間にしたいというご要望がありました。とくにこだわっていたのはオフィスの顔となるエントランス。オーダーメードのパーテーションで視線をさえぎりつつ程よい抜け感を演出しました。

株式会社CBCビップスの事例

奥が少人数での打ち合わせスペース。手前がスタンディングで気軽に話ができるスペース。そのあいだに設けたのがグリーンをあしらったパーテーションです。何も置かなければ無機質な空間になってしまいますが、こういった彩りを施すことでパッと明るく爽やかに。グリーンではなく四季折々の花を置いてもいいかもしれません。オフィスに居ながらにして季節の移ろいを感じられる特別な癒し空間になるでしょう。

間仕切りを兼ねた機能的な収納

株式会社河合電器製作所様の事例

文房具などの備品から大切な書類まで、オフィスには様々なものがあります。そしてそれらを仕舞っておくスペースも当然必要になってきます。そこで収納スペースを設けるわけですが、それをそのままパーテーション代わりにしたのがこの事例。スペースの有効活用につながるため、オフィスレイアウトでもよく採用されるアイデアです。

ますます需要が高まる個人ブース

株式会社ライオン事務器様の製品「デリカブース(天井付き)」
株式会社ライオン事務器様の製品「デリカブース(天井なし)」

ここではパーテーションに関連する、時代にマッチした製品をご紹介します。お客様やクライアントとオンラインでやりとりするシーンで、セキュリティ面への配慮が必要なときに重宝する個人ブース。ここ数年のあいだにオンラインミーティングの機会が増えた会社も多いことでしょう。業種を問わず、さまざまな企業で需要が高まっています。また業務で集中したいときにも便利。ソロワークスペースとしても活躍する使い勝手のよい製品です。天井付きと天井なしのタイプがラインナップされており、電源や照明が標準装備なのもポイントです。

プロの視点「施工時のポイントと注意点」

パーテーションを設置する際、その場所に確実に施工できるか事前に現地調査を行います。プロは実際の施工現場でどんな点に注意するのでしょうか。オフィスバコ橋本に聞いてみたところ、プロならではの知識やポイントがあることが分かりました。

パーテーションには大きく分けて、スチールパーテーションと軽量鉄骨壁(LGS)があります。どちらにもそれぞれ特徴があり、まずスチールパーテーションは解体&組立ができるのがポイント。例えば、しばらくしてオフィス内のレイアウトを変更することになってしまった場合でも、パーテーションを解体し、希望の位置で再度組み立てればOK。それまで使っていたものを流用できるのでコスト低減につながります。軽量鉄骨壁(LGS)のポイントは、壁面をカーブさせたり、クロス仕上げが可能なところ。オフィスにデザイン性をもたせたいときには有効です。壁にモニターなど重量があるものを掛けたいなら下地が補強されたもの、さらに防音効果も求める際はロックウールが充填されたものを採用する必要があります。また空間に開放感を出したいときはガラスがおすすめ。ガラスにもいくつか種類があり、連装(ガラス面が連続)やブロックガラス(ガラスを積み上げ)があります。視線をさえぎりたい場合にはフイルムを貼れば目隠しが可能です。

そしてパーテーションを設置する際、上部をどういった仕様にするかも重要。大きく分けてランマオープンとランマクローズがあります(ランマとは欄間のこと)。さらにランマクローズには欄間の繋ぎ目のないフルハイトタイプもあります。見た目をすっきりさせたい場合はフルハイトがおすすめです。

左:フルハイトタイプ 右:ランマオープンタイプ

上部の仕様によっては付帯設備についても考慮しておく必要があります。例えばランマクローズやフルハイトを採用し、その場所が閉じられた空間になるケースの多くは、消防法(各自治体による)によって感知器及び誘導灯が必要。そして設置の際には消防検査も行います。加えてフルハイトの場合は搬入経路の把握も必須。搬入用エレベーターに確実に載せられるかどうか、事前に寸法を確認しておきます。

あとは実際におさまるかどうか。既存の天井・壁・床にある障害物を確認します。

<具体的な確認事項>
・天井面の障害物:空調・換気・照明・感知器 等
・壁面の障害物:ガラス窓・消火栓・壁コンセント 等
・床面の障害物:スロープ・床コンセント・床下配線 等

物件がテナントであれば事前にビル管理会社へ移設依頼も必要になってきます。実際、お客様との打ち合わせでは上記をしっかりと説明し、現地の状況を把握したうえで要望にマッチするものを提案するのだそう。

ガラス素材のフルハイトタイプを採用した事例

ごちらの事例ではヒアリングと打合せを重ねた結果、素材はガラスでフルハイトタイプが採用されました。エリア分けの役目をしっかりと果たしつつ、スタイリッシュで開放感あふれる空間を演出しています。そして床面にもご注目ください。木肌や木目の濃淡が織りなす美しいコントラストが印象的です。

まとめ

いかがでしたか。普段は自然に溶け込んでいるオフィス環境の一部かもしれませんが、パーテーションの存在がオフィス全体の機能性を高めていることが、お分かりいただけたかと思います。とくに今、オフィスの改装を計画している方はぜひこの機会に知識を深めておきましょう。事前に知っておくことは工事を依頼する側にとっても大変有意義なこと。実際に工事を発注することになったとき、業者任せにならず、納得のいく結果が得られるはずです。

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